それはたった一瞬の、
「誰も知らないはずの秘密があって、でも柊はどうしてかそれを知ってた」
私と沙霧しか知らないはずの秘密を。
「…柊は、そういう人です」
半ば諦めたように呟かれた言葉は、少しの間宙を彷徨って私の脳に届く。
「私はまだ朱天楼のことを何も知らない。それでもみんなのことだけは知っておきたい」
「次は柊のことを知る番だと?」
「うん、そういうこと」
力強く頷くと、彼女の表情がほんの少し安心に緩んだように見えた。
あのシルクハットの下に隠された表情を、私は見ることができるだろうか。