それはたった一瞬の、


正座した膝の上で拳をぎゅっと握りしめて、彼女はか細く呟いた。


「きっと、藍火は傷付きます」

以前にも聞いたような言葉が鼓膜を伝って流れ込んでくる。

優しく突き放すその態度に、笑えばいいのか泣けばいいのか、それとも怒ってしまえばいいのか。


わからないから、無表情のまま頭を垂れた。

「…でもこのままじゃ、私はここに連れてこられた意味が無いような気がする」

日本の中かもわからない、この不思議な場所。

そこに突如訪れた私。


ここにやってきたことに何か意味があるのなら、それを果たす義務がある。


< 119 / 228 >

この作品をシェア

pagetop