それはたった一瞬の、


――あそこにいるみんなは、それぞれ何かを抱えているからね。


何度も脳内でループする、あの日の柊の寂しい声音。


「あなたも、“何か”を抱えていたんだね」

まるで他人事のようにさらりと言うから、気付かずにいた。

彼だって“何か”を抱えるうちの一人だということに。


諦めの滲む嘲笑がその唇から零れ、薄っぺらい言葉が紡がれる。


「…そうか、とうとう僕の番か」


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