それはたった一瞬の、
困り果てている私に、シルクハットに燕尾服といった格好の男の人が近づいてくる。
あ、この人さっき一番上にいた人だ。
「初めまして藍火様。初対面だというのにこんなやり取りを見せてしまって、申し訳ないね」
「は、はぁ…」
シルクハットを目深に被っているものだから、口元でしか表情が判別できない。
なんか、変な人。
頑張ってシルクハットに隠れた目を覗きこもうとすると、彼が微笑む。
「僕の目が見たいのかい?…罪な人だね、隠しているものを無理に見ようとするなんて」
「なっ」
独特の口調に翻弄されていると、よもぎちゃんが私を庇うように前に出てきた。