それはたった一瞬の、


困り果てている私に、シルクハットに燕尾服といった格好の男の人が近づいてくる。

あ、この人さっき一番上にいた人だ。


「初めまして藍火様。初対面だというのにこんなやり取りを見せてしまって、申し訳ないね」

「は、はぁ…」

シルクハットを目深に被っているものだから、口元でしか表情が判別できない。

なんか、変な人。

頑張ってシルクハットに隠れた目を覗きこもうとすると、彼が微笑む。


「僕の目が見たいのかい?…罪な人だね、隠しているものを無理に見ようとするなんて」

「なっ」

独特の口調に翻弄されていると、よもぎちゃんが私を庇うように前に出てきた。


< 13 / 228 >

この作品をシェア

pagetop