それはたった一瞬の、


いつも答えをはぐらかす柊は、もっと冷たくて薄情な人だと思っていた。


けれど抱きしめられた今、彼の体はこんなにも温かい。

「代わりに手に入ったのは、普通では到底ありえないような目だけだ…」

それはとても綺麗な瞳だと、そう言ったからといって何の慰めになるだろう。

コンプレックスをいくら褒められたって、彼の心が救われるわけじゃない。


「僕の目は普通の景色を映さない。目の前にあるのは、七色に歪んだ景色ばかりだ」


一層抱きしめる力を強めた彼が、せせら笑うように鼻を鳴らす。

馬鹿みたいだろう、と弱々しく吐き出された言葉に反応することができなかった。


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