それはたった一瞬の、


硬直している間に、あっけなく柊と距離が離れる。

「研究所にあった実験ノートを、僕は大人の目を盗んでこっそり見てしまった。正直言って、見るんじゃなかったと思った」


彼が何かを口にするたび、その傷口から血が噴き出す音がする。

彼自身が放った言葉の槍はその思惑通り、目をつぶりたくなるほど無残に彼の傷をえぐっていく。


「そこにはみんなの実験結果が載っていた」

ある少年の脳を取りだしたら身体機能が停止してしまい、ほとんどの臓器を慌てて機械で代用したこと。
その際聴覚神経の代用品が入手できず、異常に高機能なものを仕方なく使用したこと。


ある少女の脳を取り出せばホルモンのバランスが崩れ、成長できない体になってしまったこと。


それらの実験がすべて、「失敗」というたった2文字で完結されていたこと。


< 132 / 228 >

この作品をシェア

pagetop