それはたった一瞬の、


「僕もこのノートに同じように書かれているのだと思うと、次のページは怖くてめくれなかった」


命を預けてまで実験台になったのに、与えられたのは「失敗作」という烙印だけ。

「殺してやりたいほど、胸が疼いた」

物騒なことだと笑えるものではない。

柊たちがされたことは、それほどに深く心に傷を残した。


きっと一生涯、消えることのない傷を。

「彼らは逮捕されて刑務所行きになった。だけどすべてが遅すぎた。
実験はすでに成功していたのだから」


物語を語るように滑らかに動く彼の口。

それは傷をひた隠すためのずる賢い方法だった。


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