それはたった一瞬の、


けれどそこで、疑問が頭をよぎる。

それが本当にしてもいい質問なのか言葉を選びながらもはっきりと、私は訊ねた。


「でも、ここの空は青空じゃないよ…ね?」

こんなに淀んだ灰色を「青」と呼ぶのなら、みんなの目は狂っている。

だけども彼は実験が成功したと言った。


「…本当は青い空なんて、あの人次第でいつでも見ることができる」

「え?」

小さすぎる返答が聴き取れなくて耳をそばだてると、彼は取り繕うように微笑んだ。

「何でもない」


その「何でもない」は、とても力強くて脆いものだった。

まるでこれ以上先を訊ねることを拒絶するかのように。


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