それはたった一瞬の、


大きく息を吸い込んで、私は一息に言い放った。


「私の目にはすごく優しい人が見える」

「…え、」


戸惑ったようなためらうような顔で、柊がおそるおそる私を見つめる。

絡み合う視線が真っ直ぐに互いを射る。

「私の目が見えなくなった時、真っ先にみんなの所まで連れて行ってくれそうな、優しい人が見えるよ」


自称紳士である彼は、実際とても紳士な人に違いない。

周りに気を配りすぎたから、今こんなに苦しんでいる。



「柊の目には、どんな私が映ってる?」


< 136 / 228 >

この作品をシェア

pagetop