それはたった一瞬の、


ふわり、私たちを包む優しい空気。

ドアの方に一瞬目をやってから、私はもう一度柊を見つめる。


「優しい…。僕を自分と対等に見てくれる、泣きそうなぐらい優しい人が…見える」

遠くを眺めるように虚ろな目で、けれどしっかりとした意思を持って呟かれた言葉。



泣いている私を見ると、母さんはいつも頭をなでてくれた。

『いい子だ』

母さんの温かい手が頭の上を滑るたび、胸の中をぽかぽかとした温もりが占める。

家事のせいで少しだけ荒れているあの手が大好きだった。



気付けば、彼にも同じことをしていた。


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