それはたった一瞬の、


彼が素早く瞬きを繰り返しながら彼が顔を上げる。

言い訳をするように、私は言葉を重ねた。

「柊が泣いてたから」

「…泣いていないよ?」


親鳥が雛を守るようなこの気持ちが、伝わればいい。

「泣いてたよ、心の中で」

できるだけ優しく聞こえるように言うと、彼は目を大きく見開いて笑った。

へにゃりと頼りない、今にも崩れそうな笑みだった。


「ありがとう、藍火…」


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