それはたった一瞬の、


「柊、藍火様をからかってはなりません」

「あぁ失礼、藍火様に逢えたことがうれしくてね」

妖艶な微笑みという表現が当てはまるのは、目が見えなくても明らかだった。


「僕の名前は柊。訳あってこんな格好をしているけれど、この中では一番の紳士だと思うよ」

白い手袋をはめた手が差し出され、それはどうだろう、と首を傾げながら握手を交わす。

すると向こうから2人分の叫び声が聞こえた。

「柊ー!俺が先に自己紹介しようと思ってたのに!」

「柊だけずるいかもーっ」


言いながら取っ組み合いをしている姿は、まるで大道芸かコントのようだ。


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