それはたった一瞬の、
私はそんな絶望を知らない。
母さんがいなくても父さんがいてくれたから。
だけど柊は言っていた。
――4人の子どもが金で取引され、あるいは連れさらわれて集まった。
だからきっともう彼らには、最大で最愛の2つの存在が無い。
だけどここでこうやって、笑いながら生きている。
暗く狭い世界の中で、力いっぱい生きている。
顔を上げると、照明の光が私の目を突き刺した。
どうしてかその光で胸まで焦がされたように、痛みがじんじんと燻ぶって引いていかなかった。