それはたった一瞬の、
土間に箒と共に倒れている人物を目に留めて、私は叫び声を上げる。
「藍、火…」
黒髪の隙間から覗く顔色に、再び悲鳴が上がりそうになる。
病人のように青白く、血の気の失せた顔だった。
「どうしたの、よもぎちゃん」
慌てて駆け寄ると彼女は、平気だとは思えない顔色のまま微笑んだ。
「藍火こそ、どうしたのです」
「へ?」
「部屋から、椅子の倒れる音が聞こえましたよ…」
「そんなこと言ってる場合じゃないでしょう!?」
そうだ、本当にのんびり話している場合ではない。