それはたった一瞬の、


ほぅっと息をついた瞬間、思いもかけず突き返された言葉。

「向こうに行ってください」

「え」


涙が浮かびかけたその瞳が、急に冷酷な鋭さをもつ。

さっきとは違い目も合わそうとせず、苦いものを必死で飲み下すように呟いた。

「あまり私に関わらないでください。私は憎まれているのですから」


緩みかけた空気が引き締まる。

薄氷の上に体重を乗せる時の緊張感。

「どうして?憎まれてなんてないよ」


だって沙霧も、釧奈も、柊も、そんなことは思っていない。

もちろん私も。


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