それはたった一瞬の、
けれどよもぎちゃんは認めようとせず、何度も首を振るばかりだった。
そのたびに綺麗な黒髪が左右に揺れて私の目を引く。
「いいえ、私は憎まれています。疎まれています」
まるで呪文のように、そうでなければいけないというように繰り返される言葉。
重く足を絡め取るぬかるみが、心の底まで絡みつく。
「どうしてそんなこと…」
呟くと、真っ直ぐな視線が突き刺さる。
そして視線と同じように彼女の言葉は、曲がることなくそのままに私の胸も貫いた。
「一番心を閉ざしている藍火に、そのようなことを言われる筋合いはありません」
開きかけた扉に、頑丈な鍵がかかる音がした。