それはたった一瞬の、
ひやりと冷たい空気が首筋をなでる。
耳がおかしくなったのかと思った。
だけど柊の顔を見れば、それが間違いじゃないことがわかった。
鳥肌を無視して顔を上げれば、なんて暗い微笑み。
「よくわからないんだ。憎いと言ってしまえばそれまでだけど、この気持ちはそんなに簡単な言葉では語れない」
地面に落ちる2人分の影はいつもより色濃く映る。
「前に話しただろう。僕が実験に成功する一歩手前までいった実験体だということ」
鮮やかな花は雰囲気に呑まれたように萎れそうだった。
さっきまで、あんなに美しかったのに。