それはたった一瞬の、
「僕は完成に限りなく近い不良品だ。だけど彼女は実験に成功した」
単語のひとつひとつを味わうようにじっくりと、私は耳を傾ける。
欠片だって、取りこぼさないように。
「僕が欲しかったものを手に入れながら能力を自分で抑え込もうとする彼女を、僕は許せない」
一生、許さない。
いつになく低く重い声でそう言って、彼は私の髪をなでた。
「僕は、彼女がこの世で最も愚かな人だと思っている」
不良品でありながら、実験が成功する日を夢見た彼。
完成品でありながら、実験の成功を認めない彼女。
互いが無い物ねだりだった。
決して、手に入れることなど出来はしないのに。