それはたった一瞬の、
黙って柊の向こうにある花を見つめていると、彼はくしゃりと顔を歪めて笑った。
はは、と口から頼りない笑い声がこぼれた。
痛々しくて見ていられなかった。
「そうやって見下さなければ冷静さを失ってしまう。嫉妬と羨望で胸が焦げそうになる。
あの中で僕だけは、自分を捨てるわけにはいかないんだ」
せめて自分だけは落ち着いていようと、彼は誓っていた。
自分自身の心に。
みんなが揺れた時に真っ先に自分が支えられるように。
けれど、けれどそれじゃあまるで。
あなただけは犠牲になってもいいみたいだよ。