それはたった一瞬の、


漣のように風が優しく吹くものだから、気が狂いそうになる。

今の状況と、話題と、彼の表情に、その風はあまりにも場違いだった。


「ごめんね藍火。僕は君を買い被りすぎていた」


その瞳が揺らぐたび、辺りに次々と移ろう光が輝く。

噛みしめた唇は血が滲みそうな程だった。


今の発言のどこにそんな顔をする要素があったのか。

自分の無知さが歯がゆい。


私が悪いの?
私のせいなの?


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