それはたった一瞬の、
頼りない足取りで帰っていく柊の背中を見つめながら、ため息がこぼれる。
泣いてしまうのかと、思った。
あれほど弱々しい彼は見たことが無い。
どれだけ辛いことがあろうとも、笑顔の下にそれを隠して必死で強がっていた。
その彼が、あんなに露骨に感情を表すなんて思わなかった。
「なんで…」
私が一体、何を言ったっていうの。
再びひとりぼっちになった私は、のろのろと引き返すことにした。
気まずい思いを胸に抱きながら。