それはたった一瞬の、
誰にも秘密を打ち明けられず、想いと自身の間で揺れる沙霧がいた。
成長できない体を悲観し、それでも必死に生きる釧奈がいた。
瞳をシルクハットで隠すことで、ひたすら自分を誤魔化す柊がいた。
心を灰色の壁で厚く覆ったよもぎちゃんと、自分は部外者だと思いこもうとする私がいた。
「家族、って言わせて」
同じ場所で笑って、泣いて、怒って、たったそれだけの簡単なことなのに絆はこんなにも深かった。
知らない土地に放り出されても、みんながいたから寂しくなかったの。