それはたった一瞬の、


夢かと思った。

そうでなければ、私の脳が幻想を映しだしているのかとさえ。


けれど周りのみんなの顔とこの騒ぎを見れば、それが幻想でないことは明らかだった。

スクリーンにひびが入って、次々と空が剥がれ落ちていく。

目の前をよぎるスクリーンの欠片は、最期に美しい青空を描いていた。


「空って、こんなに…」


そこから先、沙霧の声は出てこなかった。

次いで鼻をすするような、掠れた音。


視界に映る人々、みんなが涙していた。

欲しかったもの、望んだもの、思い描いたものが。


やっと、やっと手に入った。


< 183 / 228 >

この作品をシェア

pagetop