それはたった一瞬の、


一瞬、本当に一瞬だけ。

辺りの景色が、砂嵐のように歪んで見えた。


「あなたは私たちを、本当によくわかってくれた」

「当たり前だよ」

最初は何もわからなかった。

わからないことが怖くて、踏み込めずにいた。


私はここに乱入してきた異質なもの。

そう思い込んでうわべだけで関わろうとした。

だけど思い出したの。


――わからないから、知るんだよ。

そう言った父さんの言葉を。


< 186 / 228 >

この作品をシェア

pagetop