それはたった一瞬の、
6.それはたった一瞬の、

沙霧の場合



彼女がここを去ってから、長くも短い月日が過ぎた。


人工のものではない空は、今まで気付いてもらえなかった存在を誇示するかのように堂々と広がっている。

今まで制御されていた気候とは打って変わって雨が降り、蒸し暑い日も寒々しい日もあった。


だが彼らは、それを疎ましくは感じなかった。

それが当たり前なのだ。
今まで自分たちは甘え過ぎていた。


昨日は雨風の激しい日だったが、今日の空は晴れ渡っている。

陽光にきらめく水たまりを見ながら沙霧は微笑む。

これまでの灰色の空が、嘘のようだった。


「ねぇ、沙霧」


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