それはたった一瞬の、
だけど今世界はこんなにも明るいから。
藍火のおかげで彼も笑ってくれたから。
釧奈は心の底から感謝していた。
彼がずっと隠してきたという、自身の聴覚異常の話。
怯えながら、自分の体を掻き抱くようにしながら話す彼を見て、驚くよりも拍子抜けしてしまった。
「なぁんだ」
もっともっと、重くて怖い話かと思っていたのに。
「なぁんだって何だよっ、俺はなぁ…!」
今にも噛みつきそうな彼に抱きつく。