それはたった一瞬の、
柊の場合
雨が降り、暑い日も寒い日もあった。
信じられなかった。
今まで自分たちが信じてきた世界とはまったく違っていたから。
快適さとは程遠い日々の中、それでも幸せだけが彼らを取り囲んでいた。
変化のある日々がこんなに楽しいだなんて、思っていなかった。
机の上には薄く埃を被ったシルクハット。
彼女が去っていったあの日以来、彼はそれを手に取ったことはない。
素顔の自分が好きになれた。
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柊の場合