それはたった一瞬の、


外に出ると、着物姿の人影が玄関を掃除していた。


彼女は世界で最も愚かな人。

きっと永遠に自分の観念が変わることはないのだろう。

だけどあの時散らばっていったスクリーンの欠片は、最後に一瞬だけ青空を映しだしていた。


思うのだ。

藍火の手によって、彼女もまた闇から救われたのではないかと。

「待って、柊」


敬語の無くなった軽い調子の言葉が、出かけようとした彼の背中を呼びとめる。


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