それはたった一瞬の、
以前は黒地に赤い花模様の着物しか着なかった彼女が、最近は明るい色の着物を好んで着ている。
ちょうど、あの空のような色を。
「藍火が、いなくなったけど」
「あぁ…そうだね」
彼女が凛とした声を発しながら、柊と視線を合わせる。
「寂しいと思う?」
「…不思議なんだ」
答えにならない答えに、彼女が戸惑うように口を開く。
「ずっと思っていたの。あなたは…藍火が好きだったんじゃない?」