それはたった一瞬の、

よもぎの場合



箒が土間を滑る、滑らかな音。

この音を聴いているだけで気持ちが落ち着く気がする。


掃除をしている最中、ふと自分の着物に目を留めた。

彼女が全力で吐き出した言葉。


――私、本当のよもぎちゃんはもっと綺麗な青色だと思うんだ。

あの一言は確実に彼女を闇から引き上げてくれた。


今も機能しているだろう自分の脳の欠片は、きっと青空を描き続けている。


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