それはたった一瞬の、
あぁ、そうか。
きっとこの中で誰よりも辛い思いをしたのは彼だった。
よもぎは知っている。
彼が自分を嘲っていること、彼が最も自分という存在に焦がれていたこと。
「完成品」という立ち位置が、彼は欲しかったのだ。
そして彼女はそれをふいにした。
研究ノートに書かれた内容を、よもぎも盗み見たことがある。
「失敗」という2文字が与えられた3人と、唯一「成功」という文字を残された自分。
同じ2文字の言葉なのに、どうしてこんなにも違うのだろう。
そしてそれは彼女にとっても彼らにとっても、重すぎた。