それはたった一瞬の、


私は父さんに笑いかける。

「父さん」

「まさかこんなに早く帰って来るとは思わなかった」

「はは、だろうね」


母さん、どうして教えてくれなかったの。

「もっと早くに処分しておけばよかった」

なんて演技派の夫婦だろう。
おかげでずっと騙されていた。








「…作家だったのは、父さんの方だったんだね」

「そうだよ」

こんな伏線があったなんて、思いもしなかった。


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