それはたった一瞬の、
「でも私、いつも母さんに原稿を見せられてたよ」
母さんが自慢げに見せてくる原稿。
意味はわからなかったけど、きっとこれらはとても優しい言葉なんだろうと思ってた。
だって、母さんが書いたものだと思っていたから。
「いいんだよ。あの原稿はお前の中で、父さんの原稿じゃなくて母さんの原稿だったから」
頷くフリをして私は紙の束を見つめる。
「…捨てるの?」
「本当はもっと前に捨てるつもりだったけどな」
中途半端な状態で放り出された原稿たち。
ちゃんとしたエンディングに辿り着けないまま、ここで命を終えようとしている。