それはたった一瞬の、
なんてあっけない宣言だ。
ちょっと簡単すぎじゃないの、父さん。
そう言ってやると、父さんは原稿の束を持って自室に向かっていってしまった。
止まっていた彼らの時間も、もうすぐ動き出すことだろう。
「恥ずかしいけど、藍火に読んでもらうのも悪くないな」
「…父さん、ひとつだけ教えて。最後にこの人たちは幸せになれるの?」
想いを伝えることができずにいた沙霧、自分の気持ちを精一杯押し殺そうとした釧奈。
本当の素顔を見せられなかった柊、自分を追い詰めることで生きてきたよもぎちゃん。
彼らにハッピーエンドが用意されているのなら、他にはもう何もいらない。