それはたった一瞬の、
感傷に浸りかけた所で、釧奈の声が私をその場に呼び戻す。
「藍火、あたしの研いだお米は?おいしい?おいしいに決まってるかも」
絶大な自信を持ったその言葉にちょっとだけ感心してしまう。
苦笑しながらおいしいと賛辞を述べると、彼女は顔を綻ばせた。
「やっぱり!?そうに違いないと思ってたかも!」
「うるせぇよお前は。米なんて誰が研いでも一緒だろ」
「むぅーっ、そんなことないかも!気持ちがこもってる分、沙霧のとは訳が違うかも」
「んだとぉ?」
また始まったよ…。
顔を突き合わせて睨みあう2人を見ながら、私は小さくため息をつく。