それはたった一瞬の、
「藍火、一緒に外へ行かないか。ここにいてもうるさいだけだろう」
「えっ?えっと…」
柊がシルクハットのつばに手をやりながら提案する。
それはいいんだけど、今さらっとひどいことを言ったような。
「何だと柊!てんめぇ、後で覚えとけよ!」
「容赦しないかもー!」
そう言いながらもケンカを止めないのだからどうしようもない。
柊が肩を竦めて私の手を引く。
「怖い怖い。行こうか、藍火」
言いながら、何のためらいもなく差し出された手。