それはたった一瞬の、


柊がにっこり笑う。

「お手をどうぞ、お嬢様」

「な…!?」

紳士なのはいいけれど、こういう扱いには全然慣れない。

女の子らしさなんてほとんどないし、男の子と付き合ったりとか、そういうこともなかった。


赤面してしまう所がさらに恥ずかしい。

ふくれっ面でその手を握って、私たちは建物を出た。

「いってらっしゃいませ」

深々と頭を下げて私たちを見送ろうとするよもぎちゃんに、私は声をかける。


「よもぎちゃんも一緒に行かない?」


< 28 / 228 >

この作品をシェア

pagetop