それはたった一瞬の、

弱い背中



「お帰りなさい藍火、柊」

帰ってくると、よもぎちゃんが玄関先を箒で掃除していた。

私よりも年下に見えるこの子は、どうしてこんなに女の魅力を持っているのだろう。


そう言えば母さんも、お帰りを欠かさず言ってくれる人だったっけ…。

母さんと過ごした時間なんてたかが知れている。


12年。
口にしてみれば短く、後から振り返ってみても、なんて早く駆け抜けた日々。

けれどその短い年月の間に幾度となく繰り返された会話はなかなか消えてはいかないんだ。


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