それはたった一瞬の、


鍋の中を見れば大体予想は付く。

千切りにされた牛蒡と人参、それにこんにゃく。

「きんぴら、でしょうか」

「うん、そう。でも味付けがよくわかんなくって、沙霧も忙しそうだったから自分で考えて味付けしようとしたらこうなっちゃって」


なるほど、私も小さい時に似たような失敗をしたことがある。

家庭料理というのは大雑把なもので、料理する人の勘と経験で作られているから。


途方に暮れている小さな背中に、私はある提案をした。


「ねぇ釧奈、これって…」


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