それはたった一瞬の、
コンコン、とドアを叩けば気だるそうな返事が返ってきた。
「おー…、何か用か」
「沙霧、入ってもいい?」
「おぅ、ちょっと待っとけ」
間もなくして開いたドアの隙間に体を滑り込ませるようにして、釧奈と2人で部屋に入る。
まさか釧奈がいるとは思っていなかったようで、つり上がった目がほんの少しだけ見開かれる。
「どうしたよ、いきなり」
「あのね沙霧っ。あたし頑張ったかも」
興奮でたどたどしい言葉しか出てこない彼女を呆れたように見ながら、彼がひとつあくびをする。
「あぁ?なんだそりゃ」
「藍火が助けてくれたんだよ!」
「へぇ…」