それはたった一瞬の、
3.内緒だよ
材料を継ぎ足して作ったきんぴらの匂いが、辺りに充満する。
沙霧に少し遅れて台所に入ると、釧奈の姿が無かった。
「あれ、釧奈は?」
沙霧を手伝ってご飯の支度をしていたよもぎちゃんが、ゆっくりと首を傾げる。
「藍火と一緒に台所を出てから戻っていませんが…」
もうあれからだいぶ時間が経っている。
沙霧に言われたことがよっぽどショックだったんだろうか。
「マジかよ、めんどくせぇ」
「沙霧、釧奈呼んできてよ」
「あ゛ぁ?ったく…」
口ではものすごい悪態をついているけれど、内心では心配していることぐらいわかる。