それはたった一瞬の、


ループする泥沼の思考から私を救ってくれたのは、よもぎちゃんの声だった。

「藍火、明日買い物に行きたいのですが…よろしければ一緒に来てくださいませんか?」

「うん、もちろん!」


柊と出かける時に断られたから、もう私とは出かけてくれないのかと思っていた。

だからその誘いは単純にうれしかった。


その後はさっきよりも無性にご飯がおいしく感じて、ついつい食べ過ぎてしまったぐらいだった。

温かいご飯、満たされたお腹、大勢の笑い声。


幸せとしか形容できないその中に何か足りないものがあることを、うまく言葉にはできなかった。


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