それはたった一瞬の、


一緒に足を運んだ小物屋で、よもぎちゃんが口元に指をあてがって考え込む。

この店の中には男の人にあげる物なんて売っていないから、本当に女の人にあげるんだろう。

…ちょっと残念かも。


「藍火には気になる方はいないのですか?」

「えぇ?」

まさかそういう方向に話が進むとは思っていなかった。

だって私、恋愛経験とかまったくないし…。

「いないよ、そんなの」

「でも引く手数多なんでしょう?」

「な、なんで!?全然!告白とかされたことないよ!?」

「えぇっ?」


よもぎちゃんの中で私はどれだけ美化されてるんだ。
そんなこと、あるわけがないのに。


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