それはたった一瞬の、


言えなかった。
沙霧の大きな気持ち。

それを私が言葉にすればすべてが無駄になってしまう。


沙霧が釧奈を側に置きたいと思う気持ちも、離れてほしいと願う想いも。



口を閉ざしたままの私に、彼女は小さく息をつく。

「…まぁ、いいや。本人から聞かないと意味ないしね」

でもきっと、彼は話さない。

プライドよりも自分よりも、大切なものがあるから。


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