それはたった一瞬の、
釧奈が私の手を握る。
紅葉のように小さな手は、温かくて柔らかい。
だけど表情だけが、凍りついたように冷たくて堅かった。
「あのね藍火。今までずっと黙ってたことがあるの。
こんなに苦しくなるなら、すぐに言っちゃえばよかった」
私の手を握る手が、ゆっくりと力を緩める。
縋りつこうとするのではなく、諦めきって距離を置こうとするように。
「あたし、藍火とそんなに歳が変わらないと思う」
絞り取られた言葉に、私は目を見開くしかなかった。
信じることなんて出来なかった。