それはたった一瞬の、


彼がいなければ今にでも彼女はその命を絶つだろう。

笑える強さがあるわけではない。

釧奈は、笑うことしかできないのだ。


私にこの秘密を打ち明けるのだって勇気が必要だっただろう。

それでも彼女は話してくれた。


そのことが私には、涙が出そうなほどうれしかった。

いいや、実際泣いていたのかもしれない。

焦点がうまく定まっていなかったから。


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