それはたった一瞬の、
釧奈がいなくなったら、沙霧は哀しむよ。
心の中だけでそう叫んで、彼にも似たようなことを言ったなとひとり静かに笑う。
釧奈の世界も沙霧の世界も、狭いものだ。
どちらかがいなければ命を絶ってもいいと思えるほど思考が偏っているのだから。
それほどに、気持ちは大きい。
けれど口に出さない。
それを言ってしまえば関係が壊れるかもしれないことを恐れて。
臆病で、屈強で、脆弱な彼らが。
結ばれる日は、来るのだろうか。