それはたった一瞬の、


私が住んでいた所とはまったく違う景色。

いいや、きっとこんな景色は日本に存在しない。


中華風の赤い建物が並ぶ中、穏やかに咲き誇る野花たち。

人間の心に住まう闇を取り払ったような風景が私を魅了する。


けれど、だからだろうか。
空だけが人々の負の感情をそこに集めたように思えるほど暗かった。

街並みはとても綺麗だったけれど、汚れた空が目に灼きついて離れない。


「どこなの、ここ」

私は一体どこに連れてこられたのだろう。

もしかして勧誘よりもっと厄介なものに引っかかった?


「ここは夢の都、朱天楼(シュテンロウ)。私たちの住みかでございます」



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