それはたった一瞬の、


真剣に相手を想って、真剣に涙を流して、真剣に笑ってた。

「藍火の応援があれば心強いかも」


そのおかしな語尾に、普段の釧奈が戻ってきたことを感じる。


沙霧が釧奈の道になる。
釧奈が沙霧の道になる。

その間に私が架けた橋もあったら、うれしいな。


長く息を吐いて背を向けた釧奈が、小さな声で呟く。


「空が見たいな。青い、青い空。
それさえあれば、沙霧もきっと笑ってくれるね」


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