それはたった一瞬の、
引きずってきた椅子の上におかゆをごとりと置き、彼は一言言い放った。
「知らねぇ」
思わず目を丸くして沙霧を見つめてしまう。
以前に聞いた話から考えれば、私たちの話が聞こえていないはずがない。
それでも聞こえていないと言い張るということは…。
「怖いんだね…」
釧奈の大きな想いを背負うことができるのか。
背負って、責任を持って守ることができるのか。
自分にそんな大役は務まるのか。
怖くない、なんて言えるわけがないんだ。